一年ぶりに来た平和な町は、
なぜか戦場と化していた。



平和主義者



「なぁ、グレイ、クリフ」
「何だよ」
「どうしたの?」
「その、何だ。お前らってさ。イヤ、お前らだけじゃないんだけど」

少しだけ言い淀む。
しかし、どっちにしろ口にしないといけないことではあるので、俺は意を決して口を開く。

「もっと仲良かった気がするんだけど」


もっと他に遠まわしな言い方もあるんだろうが、そんなのが一切苦手な俺は、結局こうやって単刀直入に切り出すしかなかった。
だってホラ、久々に訪れた宿屋の酒場では医者と鶏男が大人の迫力で嫌な雰囲気を出してるし、二階の部屋に行けばギリギリ未成年の二人が、素直に嫌な空気を出してんだぞ?
何だコレ。街をあげてのドッキリか?
ツッコみ待ちとしか思えねぇよ。
そんな俺の気持ちなんか気に掛ける様子もなく、クリフがにこりと笑う。

「やだなぁ。別にグレイなんか、仲悪くなるほど気に掛けてないっていうか」
「そうそう、クリフの事なんか、ミジンコ程も思ってないだけだって」

ウン、ソウデスヨネ。
そう答えるしか出来ない俺を責める人間がいるのなら、是非代わりにこの空気を何とかして欲しい。
ていうか、マジで俺のいない間に何があったんだ?

明らかな居心地の悪さに(自分が)いたたまれなくなって、海の家でも見てこようと部屋のドアを開ける。
すると、小さな悲鳴と一緒に鈍い音が響いた。
見れば、見知らぬ女の子が額を押さえてうずくまっている。

「痛っ〜!」
「わ、悪い、大丈夫か」

焦って打ったところを見ようと彼女に合わせて屈みこむ。
その気配に彼女が額を押さえたまま顔を上げる。
痛みのためか、彼女の瞳は少しだけ潤んでいる。
瞬間、俺は恋に落ちる。

「いや、ごめんね。私こそぼーっとしちゃって……って、見かけない人だね?」
「え?」
「私、春からこの街にいるんだけど、あなたも新しく引っ越して来たの?」
「ああ、俺は夏dぼべぁ!!」
「クレアさん、大丈夫?」
「まだ痛むか?」

自己紹介をしようとした俺は、部屋の住人にダブルで派手に蹴転がされた。
いや、正確に言うと、蹴った後に転がされた
同時に駆けつけたことに気付いて互いに火花を散らす二人を、床に転がったままぼんやりと見る。
やがてこんなに小さな騒ぎなのに、血相抱えて飛んで来た医者と鶏男も同じような視線を交わしたのを見て、この一年での変化の原因を確かに悟った。
ああ、分かった。そりゃ戦争にも戦場にもなるわな。
分かったところで、それを収める気は微塵も起きないけれど。

「なぁ、お前ら」

俺は険悪なオーラを纏う4人に聞こえるように、良く響く声を発する。
自覚と同時にライバルが揃ったのなら話は早い。
立ち上がり、集まった野郎どもをぐるりと見渡す。4対の目が突き刺さった。

「一月かけた、ゲームしようぜ?」
「ゲーム?」

真っ先に反応したのは俺の親友。他の奴らも同じような表情だ。
俺はその反応にニヤリと笑う。
そうだ、ゲーム。

「この際、お互いの事なんていいじゃねぇか。誰が蹴落とされようが、自分に落ちなきゃ意味がないだろ?」

彼女が何のことか分からず首を傾げるのとは対照的に、四人が一斉にはっとした表情になる。
そして、瞬時にその目つきが射殺すようなものになる。
いいよ、別に。野郎に対しては嫌われ者でも。

「誰が一番か、ただそれだけだ。ただし、時間はないぜ?」

この俺がいるから。
そう言わずとも、この嫌味な表情できっと全員に伝わっているだろう。
相変わらずきょとんとしている彼女に向かい、にこりと笑う。
覚悟しろよ。そんな想いを込めながら。


せっかくだ。戦りあうならとことん戦ればいい。
戦利品には十分その価値があるから。

誰もの脳裏に鐘がなり、火蓋は切って落とされた。



お題【一番乗り】


火蓋は落ちましたが、話は落ちませんでした(←上手くないです)
ウチの作品は基本ミネなかなんですが、今回はHMイメージのカイ。野郎ども(シニアだけどな)に嫌われてるイベントがわざわざあるくらいの(笑)
HMの嫌味な表情のカイに萌えるのは多分私だけじゃないはずです。
逆にミネなかではただただ素直で大らかな人なんで、嫌われてる原因が全然見えてこなくてすごく可哀相な気がします。ドンマイ。