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不器用で不器用な、自覚すらない青年と。
不器用で不器用な、自覚しかない少女へ。



さな尋問



「珍しいですね。ここ数年は、毎年彼女を呼んでいるのに」

招待状を片手に小さなドアをノックし、彼らにそう告げる。
その中の一人、シェフネンは私に気付くと、お馴染みの赤い服を翻し、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
そのまま席に座るよう私に促す。

「みんな、カーターさんが来たの!集まるの!」
「神父さん、こんにちはなの」
「よく来てくれたの」

それぞれの小人は彼の一声で私に気付き、わらわらと周りに集まってくる。
青い服のチョッカクが、小さな(といってもかれにとってはとても大きい)ティーポットとカップを手に、お茶を勧めた。

「ああ、ありがとう」
「こちらこそ来てくれて嬉しいの。これでゲームが先に進むの」
「ゲーム?」

気になる単語に聞き返すと、ティミットがおずおずと、(やはり彼にしては)大きなサイコロを指差す。
どうやら良く見るとそのサイコロの側面には、賽の目ではなく小さく文字が書かれているようだ。
近くによってその文字を読む。そこにはこう書かれていた。


「恋の話?」


きょとんとしていると、シェフネンがニヤリと笑ったのが視界の端に見えた。
彼は小さく咳払いをすると、他の仲間をぐるりと見回す。

「略して?」
「「「「「「コイバナー!!!」」」」」」


小人達の声が重なる。
え?コイバナ?

これと私と、どんな関係があるのだろう?
そう首を傾げた私に、アクアが答える。

「僕らはコロボックルだから恋の話はネタがないの。だから神父さんを呼んだの」
「はぁ……しかし、それこそクレアさんを呼んだほうが良かったんじゃ……?」
「クレアはダメなの。クレアのコイバナはぶっちゃけ聞き飽きたの!」

はぁ、そうですか。
そういえば彼女の恋の話は聞いたことがないなと思った。
しかし、彼らには毎日のように話しているという。
何故か、胸がちくりとした。話なら、私が懺悔室でいくらでも聞くのに。
明るい彼女の笑顔を思い出す。

「で、カーターさんはクレアのことをどう思ってるの?」
「私が?彼女を?」
「そうそう、聞いてみたいの!」

恋の話とはいえ、彼らと面識のある人間は極端に少ない。
だから相手に彼女が出てくるのも納得だが、そんな事を考えたことがないだけに戸惑ってしまう。


私は、彼女のことを。

一生懸命で明るくて、けれど時々、なぜか悲しそうな顔をする。
それを隠すかのような笑顔が、ふと頭に浮かんだ。
いつもそうだ。どうしたのかと聞くと、彼女は首を振ってただ笑うのだ。
そう、ただ、笑うだけ

「……気に、なります」
「そうなの?」
「心を開いている様で、大事なところは見せてくれない。けれど、それ以上に」
「それ以上に?」

彼らが出してくれたお茶に口をつける。ほっとする、独特の甘みと、けれどかすかな苦み。
まるで、彼女に似ていた。

いや、違う。

「それは誰に見せなくてもいいから、私に見せてくれないかと」

まるで、彼女のことを考える私の心。
そうだ。彼女を想うと幸せで、けれど苦い。

「なぜだか最近、そう思います」

これも職業病ですかねぇ、と続けた私に、小人達は何故か笑っていた。
私はその表情の意味が分からないまま、けれど少しスッキリした気持ちで彼らの家を後にした。


◆◇◆


「クレア、もう出てきていいの」
「クレア?」
「どうして座り込んでるの?」

部屋の奥に隠れていた少女は、床にへたり込んだまま、呆然としている。
顔は熱がでているのかというように赤く、小人達が呼びかけて、やっと我に返る。
お茶会に来いと言ったと思えば、こんなところに隠されて。
彼が尋ねて来ただけでも驚いたというのに。

「びっくりした。カーターさん、そんな風に……」
「神父さんは良く見てるの」
「どっかの鈍い牧場主とは大違いなの」
「クレアも観念して、そろそろ素直になるの」
「いや、でもあの人、神父さんだし……」
「関係ないの!」
「進展のないコイバナは聞き飽きたの!」
「そろそろ面白い展開にするの!」

面白いって、アンタ達……と、少女は頭を抱える。
まだ自覚もないだろう彼の心。
しかしその気持ちがどこに向かっているかは、少女以外の全員が自信をもって断言できた。

原因となったサイコロを、少女がぽいと軽く投げる。
今度は、『信じられない話』という面が現れていた。




お題【お茶の時間】


テーマ的にコロボックルとの交流の予定だったんですが、頭の中で組み立てるうちにカタクレに。ミラクル。
ほとんど書くことのない二人ですが、恋愛対象じゃないキャラって逆に楽しかったです。
何でカーターさんは攻略できないんだろーなー。いいのになぁ。